富山庄川小矢部自転車道は、富山県富山市から小矢部市までを結ぶ58.8kmの大規模自転車道です。主に加越能鉄道の用地や廃線区間を経由して、国内最大とされる砺波平野の散居村を走り抜けます。2024年10月25日走破。
富山庄川小矢部自転車道の基本情報
正式名称は富山県道370号富山庄川小矢部自転車道線。
起点から庄川までの区間が通称中央サイクリングロード、終点までの区間が富山庄川小矢部自転車道として整備されています。
計画延長58.8km。昭和49年(1974年)整備開始、昭和56年(1981年)整備完了。
起点 | 富山県富山市鵯島(旧中央サイクリングセンター跡地) |
終点 | 富山県小矢部市石動町(石動駅駐輪場) |
起点最寄りはJR富山駅およそ3km。終点最寄りはあいの風とやま鉄道石動駅すぐそば。富山駅は言わずとしれた富山の中心駅で、北陸新幹線利用で東京から2時間、大阪から3時間。あいの風とやま鉄道ではサクルトレインも運行されています。
富山県富山市鵯島の旧中央サイクリングセンター跡地を出発。2km地点から3kmまで斜度10%近い峠越えがあり、超えた後は田園風景の中西進し大門を目指します。旧大門サイクリングセンター跡からは庄川を遡る形で南下、庄川水記念公園前でコースは折り返し、加越線廃線敷を通り北西へ。途中道の駅庄川、旧井波駅舎等を通過し、終点富山県小矢部市石動町の石動駅駐車場へ至ります。
起点850mほど北東にしんきろう自転車道の起点があり、接続可能。また、ナショナルサイクルルートである富山湾岸自転車道の朝日町・小矢部市ルート、または田園ルートとして一部区間が組み込まれています。
富山庄川小矢部自転車道に至るまで
恒例のJR西日本サイコロきっぷ2024秋で見事富山を引き当てた私。前回は金沢を引き当てたものの、冬季自転車道閉鎖期間につき活かしきることができませんでした。今回はいい季節ということで、走行距離長めなのでK9X抱えておりたたぶ出動です。新大阪からサンダーバード、敦賀で延伸したばかりの北陸新幹線つるぎに乗り換えていざ富山。

2時間半で富山に到着。訪れるのは初めてですが、まず目を引くのは路面電車。それ自体が珍しいのに、数とバラエティが豊富でなにこれすごい。


3kmほど南西、起点である旧中央サイクリングセンター跡向かいます。
富山庄川小矢部自転車道を走る
起点

起点の中央サイクリングセンター跡は既に閉鎖済み。WaybackMachineを確認してみると平成22年(2010年)までは運営しており、翌年に閉鎖されたようです。古いサイクリングセンターが今でもまともに稼働しているのをあまり見ません。現在は何か資材置き場にでもなっているのか、トラックが荷物の積み下ろしをしていました。
「中央サイクリングセンター」の看板も「中央サイクリングロード」の案内図も残っていますがすっかりくたびれておりボロボロ。ここから大門までの間が「中央サイクリングロード」として整備されています。

横断歩道渡った先にはレアな自転車専用標識。が、眼の前は富山大学やらスポーツセンターやらなので当然普通に歩行者が歩いています。ほぼ消えかかった「中央サイクリングロード」の表示も。

ルートの橋が工事中。とはいえさほど支障なく50mだけ軽く迂回だけして進行。

用水路沿いの少し荒れた道を進みます。周囲の風景から多分普段は学生さんが多数利用してる気がしますね。

進行中県道表記のヘキサを発見。比較的新しい様式でこれがあると「少なくとも見捨てられてない」と判断できるので安心感があります。


走り始めから2kmほどで道は山の方に。富山テレビ送信所のある峠を目指します。いや、できれば目指したくないけれども。

で、ここが斜度10%前後のそこそこ激坂。コースも結構な割合が階段になっていて、自転車で登ろうと思うと車道側走らなきゃなりません。とはいえ1kmほどなので、気合で登坂。このあと50kmくらいあるのにいきなり足持ってかれるのはキツイ。

峠に差し掛かろうというところで、視界の先に工事車両と停止表示。ガッツリ富山テレビ塔前が工事で封鎖されてました。「マジかー!」と思いつつ誘導員さんに聞いてみたところ「抜け道あるよ」ということで、敷地内っぽいところを自転車抱えてこそっと通過。通れなかったら数kmは迂回することになってました。ありがとう誘導員さん。

このあたりは「白鳥ライン」と呼ばれており、基本的に中央白線備えた歩道完備。ただ、左右入れ替えのところで、溝を跨がされる場面があります。

途中、開けた駐車場スペースがあり、射水市や富山新港までが見渡せるスポットになっています。夜景が名物らしく、夜はデートで来てる車両とかが停まってそう。

下り坂が気分良くなってきたあたりで分岐表示。自転車道側は積もった落ち葉等状況があまりよろしくないですが、コースなので仕方ない。

そして最後は階段です。自転車が走れる余地がない……と思いきゃ、右側にダートがあるじゃないですか。履いてて良かった「ビリー・ボンカーズ」というわけで強引にダウンヒル進行。

ここからは元は鉄道用地だったものが買収されたとのことで、それらしくしばらく直線の快走区間となっています。気分良くペダルが回る。
東老田駐輪場(6km~)

元々線路があったわけではないはずなので、特段ホーム跡というわけではなさそう。多分、鉄道用地跡ということでホームを模して作られたのではないかと推測します。自販機はありませんがトイレは完備。


このあたりから大崗山ランドの表示が増えてきます。上記交点奥にも自転車道が伸びているのですが、その先が途切れてしまい、このあたりは正式なルートがやや不明瞭です。とはいえ、とりあえず串田新黒河線沿いに太閤山ランドを目指せばOK。
県民公園太閤山ランド(10km~)

太閤山ランドは富山県の置県100周年を記念して作られた県民公園で、プールやアスレチック施設等を備えます。

このあたり自転車道も歩道としっかり分離されておりガッツリとした作り。ただ、自転車道のコースとしては一番迷いやすい箇所になってます。

薬勝寺池公園西側に向かう交差点を曲がるのですがこれはコース知らないと無理。標識が何も無い。他の部分の充実度と比べてこのあたりの雑さが謎です。

薬勝寺池公園前まで来ると案内が復活するので順路に従って進みます。「連絡路」と表示があるので、あくまで暫定のルートだったのかもしれないですが。


左奥に見えているダートの道が、本来は正式なルートになる予定だったのかもしれません。

自転車道あるあるですが、明らかに余計な迂回をさせられるケースが少なくありません。
水戸田駐輪場(13km~)

本自転車道は距離も60km近くの長距離ですが、その分やたら休憩所が充実しています。一方で設置場所は割と唐突で、本当に田畑のど真ん中にどんと現れたり。

和田川沿いまで出たあとは、北上して庄川との合流点へ。
旧大門サイクリングセンター(18km~)

中央自転車道の終点、旧大門サイクリングセンター跡へ到着。現在は建物はそのまま看板が「いみずサクラマスセンター」なる施設に変わっています。眼の前の公園が「射水市和田川リンリン公園」とその名前に痕跡を残す形。

「中央サイクリングロード(コースに表記ゆれしてますが)」が終了し、以後終点まで富山庄川小矢部自転車道表記に切り替わります。

ここから庄川右岸沿いを進むのですが、ひっそりゆるやかな上りになっています。20kmで100mなので坂とも呼べませんが、小径車は環境条件に敏感なので思った以上に進まなくなります。向かい風ならなおさら。あんまり楽しくない区間。

途中、右岸と左岸の切り替えがあります。
中田橋サービスエリア/大清水駐輪場(26km~)


中田橋を渡ってすぐ左折せずちょっと進むと「中田橋サービスエリア」なる看板と休憩所が現れます。富山県のマップでは「大清水駐輪場」と記載されているところで、表示の差異の理由はわからず。この後の休憩所は同様に「サービスエリア」表記だったり何もなかったりまちまち。

上りなのは原点ですがこのあたり路面状況は良好。
大田リバーサイドパーク/太田駐輪場(32km~)

ここだけは「大田リバーサイドパーク」という表公園示。そもそも駐輪場と実は別物なのかもしれませんけれども。水飲み場やトイレなどがしっかり完備されています。

ひたすら庄川沿いを進むと、やがて案内が川を離れる方向へ進みます。
庄川駐輪場(39km~)

少し回り込んだところにあるので、普通に走ってると見落としそうな休憩所。ここは周辺観光の剥げかかった古い(おそらく40年前後)案内看板があるものの、サービスエリア等の表記がありません。
道の駅 庄川(39.5km~)
このあたりからは、旧加越線の廃線敷になります。つまり基本的にまっすぐ、ということ。

休憩所から進んですぐ、左手に道の駅庄川が見えます。今回はここで休憩と少し遅めのお昼。

「よごし」は砺波の郷土料理で、名前の由来は「汚し」「夜越し」で諸説ありとか。素朴な味付けでご飯が進む。足を休め腹ごしらえをして、後半戦に挑みます。

旧井波駅跡は廃線敷らしい旧駅を残した施設で物産展示館になっています。純ヒノキ造の木造寺院風建築物で、他の廃線敷で見られるいかにも無人駅みたいな旧駅舎とは一線を画します。

柴田屋駐輪場(47km~)

JR福野駅周辺はそれまでの田園風景から一転市街地になっており、柴田屋駐輪場はその進行中にあります。交差点の一角にあるのですが、ただの公衆トイレだこれ。「ここが駐輪場か?」としばらくキョロキョロしました。かつての国交省サイトを見る限りもうちょっと何かあったらしいですが。
津沢サービスエリア/津沢駐輪場(50km~)
市街地を抜けると再び道は田園風景の中へ。

ここはサービスエリアの名を記した案内図がありました。地元の公園らしく、反対側には最近建て直されたと思しきトイレが。

途中国道359号線沿いに小矢部川を超え、再度国道を離れ田園風景の中へ。
藪波サービスエリア/浅池駐輪場(53km~)


こちらもサービスエリアと駐輪場名が異なる。看板は手書き感溢れ相当古いものだとわかります。道の駅庄川あたりからそうなのですが、このあたりは典型的な散居村で、周辺を見ると田畑の中にポツポツと民家があり、民家とセットで「カイニョ」と呼ばれる小さな屋敷林がある、という光景が広がっています。最近は屋敷林の維持が大変でなくしてしまう家が増えてるとか。

ここまで来るとそろそろラストスパート。ゴールの石動を目指します。

渋江川橋は旧鉄道橋をそのまま利用した橋です。廃線敷の遺構なのですが気づかなければ普通の橋なのでイマイチありがたみは薄いかも。


北陸新幹線との交差部分、昔はルートは直進していたようなのですが、その後北陸新幹線が建設されたため道が寸断された模様。迂回して高架を潜りルートへ合流します。
終点(58.8km)

ゴールは石動駅近くにある駐輪場です。特段終点表示のようなものは無い……のですが、地面のブルーラインはもう少し先まで続いています。

150mほど先、石動駅前の商業施設手前に起点・終点の表示がありました。富山県の設定する「田園サイクリングコース」としての設定だと思われます。

眼の前の石動駅から、残念ながらサイクルトレインは予約が合わなかったので通常輪行で富山の宿へ帰還します。
富山庄川小矢部自転車道のまとめ
峠の階段はいただけませんが、それ以外の区間は古いにも関わらず路面状況も良好でよく整備されている自転車道です。ナショナルサイクルルートの傍系ルートというのもあるでしょうけれども。太閤山ランド周辺など一部案内が不親切なところはありますが、距離を考えれば案内表示の状況も良好。
休憩所とトイレはわりと多いのですが、基本田園ゾーンの中を駆け抜ける関係で補給ポイントは限られます。道の駅や途中の市街地は見逃せない。
いきなり峠越えからスタートし、田園地帯を抜け、庄川沿いを走り、砺波平野の散居村を駆け抜ける。旧井波駅舎等の見どころは後半に多め。廃線敷や河川堤防上が多いためコースは直線区間が多く、大きな道路との交差も少ないため大変走りやすくなっております。
富山でサイクリングロードといえば海沿いのナショナルサイクルルートですが、こちらの日本の田園風景も捨てがたい。国内最大の散居村のど真ん中をのんびり駆け抜けてみるのもいかがでしょうか。
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