DAHON K3/K9X ゆるカスタム(グリップ編)

カスタム
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グリップは乗り手の体が自転車に接する3箇所のうちの一つで、よいグリップを使うことは操縦性の向上や疲労軽減に繋がります。折りたたみ自転車界隈ではブランド的にERGON一強と言って良い状況ですが、種類が多くわかりにくいので実質ERGON解説編になってしまうのは是非もなし。

グリップの基本

本来はグリップの前にハンドル形状があるのですが、いわゆるブルホーンやドロップハンドルは魔改造の域に突っ込むので通常のフラットハンドルのみを前提に話を進めます。

グリップの機能

スポーツバイクではハンドル、サドル、ペダルの三角形で体重を分散し担います。ロードレーサーほどではないにせよ、K3/K9X等も結構な前傾姿勢になるため、ハンドルのパーツとして直接掌を受け止めるグリップも大きな役割を担います。

握りにくいグリップはハンドリングのミスを招き、また掌の疲労も同様で、時には痛みさえ伴います。結果、特に長距離走行においてはその限界距離が変わってくることになります。自転車は快適に乗れさえすればどこまでも走れる乗り物ですが、体のどこかに痛みが出た途端拷問器具に転じます。

ただし、K3/K9Xのような折りたたみ自転車ではMTBで要求されるようなハードな固定力や耐衝撃性は重要度が低くなります。折りたたみ箇所のある脆弱なハンドルポストでハードアクションとか、小径タイヤで高速ダウンヒルとか、狂気以外の何者でもありません。

グリップの見た目

当然ながら握ってるときは目立ちませんが、正面から見た際最も目立つ部位であり「カッコよさ」「可愛さ」に多大な影響を及ぼします。特に写真撮影の際は自転車降りて撮影することが多いでしょうから「映え」にこだわるならぜひとも気にしたい。

製品によってシルエットが結構変わりますし、カラバリの有無もまちまちです。

グリップの選択肢

グリップ自体は様々なメーカーから製品が出ていますが、選択は実質「デフォルトかERGONかそれ以外か」「ERGONの中で何を選ぶか」になりがちです。他社製品も実質ERGONの廉価版的なものが多く、それほどにERGONのブランドは現状圧倒的。その分ちょっとお高くはありますが。

ロングライドを考えるなら快適性の高いものを、街乗り短距離で考えるなら純粋に手に合うものを選ぶのがよいのではと。

デフォルトグリップ

K3にはEVA素材のスポンジグリップが装着されています。

使い込んだK3の標準グリップ

20g台の軽量さだけが取り柄とも言われますが、円筒形ではなく握り易さも考慮して多角形にカットされており、クッション性もそれなり。おそらくKCNCのEVAグリップ同等品かOEMでしょう。短時間であれば問題ないものの、基本的に掌の受け面が小さいので、長時間乗っていると親指の付け根に痛みや痺れが出てきます。

夏場はどうしても汗を吸うので滑りやすくなったり、ロックがないのでグリップが回ってしまいやすく、ロングライド時などは掌を置いて走行しているとうっかり回って前につんのめりかねない。

と言いつつ自分は3年くらいデフォルトグリップで通し1日100km走行もこなしたのですが、ERGONに変えた途端「なぜオレはあんな無駄な時間を……」とスラダン三井状態になりました。1時間以上のロングライドするなら変えましょう。ビワイチとか考えているなら尚更。

K9Xの標準グリップ

K9Xのグリップはスポンジ製の円筒形で、掌にフィットするよう太さが部分によって変わっています。また「ぐるぐる回る」K3のグリップを受けてなのかネジで締めるロックオンタイプに。とはいえ、こちらも基本軽さだけが取り柄です。

いずれも短時間の日常街乗り用途であればなんら不自由は感じません。

ERGON(エルゴン)グリップ

ERGON(エルゴン)はドイツに本社を置くパーツブランドで、人体工学に基づいた高品質な製品を提供しており、エルゴノミクスグリップやMTB向けグリップで高評価を博しています。

まず種類が多く、公式解説も見当たらないため「何を選べばええねん!」となりがち。「GP1/ロング/L」というような書き方になるのですが、意味するところは下記のとおり。

表記意味
GP、GA、GC等グリップの種類を指します。GPが定番のオンロード用、GAがマウンテンバイク用等ターゲットはありますが、種類も多く最終的には好み。
1~5の数字グリップのオプションのサイズを指します。GP及びGSであればバーエンドバー(握るためのツノ)が伸び、GAであれば掌を受ける部分のウイングが大きくなります。その他は現在のところバリエーションがありません。
ロング/ショートグリップの長さを指します。GP/GCのみのオプション。ショートはグリップシフト(回してギアチェンジするタイプのシフター)の場合等に使うタイプで通常はロングでOK。左ロング右ショートのような組み合わせもあります。
L/Sグリップの太さを指します。掌が大きい人はL、小さい人はSということになりますが、好みなので実物を握ってみて判断するしかないです。GA等のMTB寄り製品にはバリエーションが無いものが多くなっています。

型番の更新や廃盤も結構あるので、見た目と重量等のスペック、また実際握ってみて選びましょう。とはいえ、グリップは長時間握って影響見るものなので、なかなか店頭での判断は難しいですが。

現状下記のようなグリップ種類があります。基本ウイングやツノのあるものが快適性が必要な巡航ロングライドに向き、円筒形のものはシビアなハンドリングと衝撃耐性を要求される競技に向きます。

形式概要重量
GPオンロード用。エルゴノミクス形状と大きなウイングを持ち快適性が高い、エルゴンといえばこれという定番中の定番でオススメ。155g~400g
GCGPのアップハンドル用。基本ママチャリハンドル向け。230g
GSオフロード用。GP以下GA3以上の適度なウイングを持つオールマイティーグリップで無難にオススメ。145g~235g
GAMTBオールマウンテン用。GA3はミニウイングを持つバランス型でコスパ重視にオススメ。110g~115g
GE/GD/GDHMTBダウンヒル用。円筒形とパターンが特徴でGDHはGE/GD/GFRの集大成的存在。110g~120g
GFRMTBフリーライド用。円筒形とパターンが特徴。100g
GXRMTB用。軽量なので重量重視の場合の選択肢。75g~105g
GTオンロード用。新コンセプトマルチポジショングリップ。特大ウイングと凹凸を持ち、様々なポジションを取れる。オススメ。230g~255g

それぞれのエルゴングリップ(2024年9月時点)について特徴等を解説してみます。

GP

ERGONで最も古い、エルゴノミクスグリップといえばこれ、という定番中の定番。GP1~GP5まであり、数字が増えるとバーエンドのツノがニョキニョキ伸びます。全種L/S有り、GP1~3まではロング/ショート有り。

現在市場でGP1は従来品と後継になるGP1 Evoが流通していますが、好みや評価はわりと割れる模様。基本はラバー製ですが、おしゃれ重視のコルク製等もラインナップされています。ただしコルク製のツノは1と3のみ。

掌をしっかり受け止め疲労を軽減する厚く広いウイングが特徴で、バーエンドを伸ばすとポジションが増やせるので更に疲労軽減が可能。街乗りは勿論、ロングライド及びツーリング用途に最適です。握るというよりは掌を置く感じの持ち方がメイン。

他方、厚さの分ちょっと重量があるので軽量化用途には不向き。

K3に装着したGP1

K3に装備してますが、安定感と快適性はさすがです。

GC

GPと同様の形状ですが、対象にしているハンドルバーがエンドスウィープ角30度~60度ということで、いわゆるママチャリのセミアップハンドル(手前にぐいっと曲がってるタイプのハンドル)向けになります。ツノは伸びません。ロング/ショート有り、コルク素材バリエーション有り。

通常のスポーツバイクで利用する機会は無いと思いきゃ、フラットハンドルに付けても悪くないとかなんとか……噂のみでレビューも見つけられていませんが。

GS

GPよりはややスポーティなアウトドア向きで、ツーリングやトレイル等幅広く対応するオールマイティーグリップです。1~3まで数字が大きくなるほどバーエンドのツノが伸びます。L/Sサイズ有り。

2023年秋にGS1 Evoが登場し、GS2同様シャープなデザインだった旧GS1に比べてGS1 evoはやや曲線的なデザインに。やはり好みは分かれる模様ですが、すでに従来のGS1はディスコンとなっているようで選択は出来ません。前述のGP1よりはスリムで握りやすく、後述のGA3よりはウイングが大きく快適性が高まっているというバランス型。

K9Xに装備したGS1 Evo

K9Xに装備してますがなかなか気に入っています。

GA

マウンテンバイクのオールマウンテンやクロスカントリー用のグリップで、激しい動きでもしっかり握れるフィット感が特徴。数字が大きくなるほどウイング部分が大きくなりますが、1は公式に掲載が無くGA2&GA3のみ。サイズ違い無し。

ネットに残る履歴見る限りGA1はGA1 evoとなった後廃盤になったようで、型番やバリエーション見ても用途近似の後述GE等のラインに切り替わっているように見えます。GA2との差もわかりにくいですし。

カラーバリエーションの豊富さに加え価格がお手頃なのも特徴で、店舗によってはK3用としても売れ筋な模様。GP/GSよりこちら、というレビューも見ます。軽量かつ握りやすいGA2、ウイングを備えツーリング性能が向上したGA3、という選択になります。

GE/GD/GFR/GDH

K3やK9Xの用途ではあまり選ばれないだろうということでまとめてしまいますが、GE/GDがダウンヒル用グリップ、GFRがフリーライド用グリップで、いずれも激しい動きと衝撃を伴うマウンテンバイクの競技用という意味で前述のGAと近似しています。数字のバリエーションはなく、握り込みに適したグリップパターンと円筒形のフォルムが特徴。

GE1 evoはカラーバリエーションからも実質GA1近似っぽい感じ。その他の差異は専門ではないのでわかりませんが、GE/GD/GFRの集大成がGDHとして集約されるようです。

ハードな乗り方を前提としたグリップなのでそもそもK3やK9Xには向きません。ハンドリング特化なのでロングライド適正も高くはないですが、街乗り用であればフィット感重視で選ぶのはアリだと思います。

GXR

お手頃価格に加え、エアーセルラバーによる高いクッション性と軽量さ、カラーバリエーションが特徴のグリップです。一応パターンはMTB向けらしいので握り込む系。素材や色などで型番自体が変わり、サイズ差の有無も型番によりけり。

最大の特徴はやはりその重量、ペアで100gを切っており、GXR Teamはエンドプラグを入れてもペア重量75gという軽量さ。マーブルカラー等独特なカラーバリエーションの物があり、K3のデフォルトグリップの特徴をそのままにちょっとオシャレにエルゴンに変えたいというような用途向け。

他方、MTB系の円筒グリップなのでロングライド適正は高くなく、軽量化のためにクランプを廃している等固定力にも不安があるため、デフォルトグリップ同様に回る可能性があります。

GT

2023年秋に登場した新進気鋭の最新コンセプトマルチポジショングリップ。特大のウイングと凹凸を持ち、様々なポジションを取ることが出来るのが売りです。L/S有り。

登場するなり評判は上々で、一時品薄になってました。ウイングが大きいので普通に握ってもいいですし、バーエンドっぽい突起があるので外側を持つことも出来ますし、内側握ることも出来るという新コンセプト。ガジェット的にも面白いグリップです。実際握ってみましたがなかなかのフィット感でした。

欠点としては特大ウイング等に伴う重量と、若干ゴツさを感じるシルエット。また、ハンドルの内側を持ちたいタイプの人だと、内側の突起は若干外に感じたり邪魔になることがあるかもしれません。

その他のメーカー・ブランド

グリップ自体は数多のメーカー・ブランドが製品を販売しています。主要なところではロックオングリップを生み出したアメリカのBMX&MTBメーカー「ODI」、ヨーロッパにおいて高い評価とシェアを誇るフィンランドのコンフォートグリップメーカー「HERRMANS」等。

総合パーツブランドである「VELO」「GIZA Products」「TIOGA」なども製品を出しており、完成車に標準装備されていたりOEMだったりすることも多いようです。

VELOっぽいパターンのTern Link N8のデフォルトグリップ

取扱状況はまちまちだと思われますので、このあたりは好みでピンときたのを選びましょう。

番外編:TOGS(トグス)

グリップではないですが関連するアイテムとして。重量17gの樹脂製パーツで、これをグリップの内側に取り付けることでポジションを増やし負担軽減が図れます。

K9Xのハンドルに装着したTOGS

グリップの内側の方を握った際に親指を引っ掛けて固定したり、ハンドルの内側の方を握った際に指の間に挟んで固定したりと、長距離ライド時のポジションにバリエーションを付加。グリップに掌を載せるだけだと滑って前につんのめる不安があるのですが、トグスに親指を引っ掛けておくことで安定感が大幅に向上します。長時間普通にハンドルを握り続けるというのはかなりキツイので、これ一つでかなり楽になります。

個人的にはこれがあるために前述のGT採用を見送りました。GTの突起はちょっと外側過ぎるので。腕の位置は大きく内側に変えられる方が筋肉の緊張がほぐれます。

問題は「このパーツが◯千円!?」てなっちゃうところ。色々あるのは理解するんですが、やっぱり印象としてはたけーんです。

グリップまとめ

好みです(結論)。では話にならないので……。

30分以上乗りません、というような日常使いならデフォルトで一切不自由しません。グリップの感触等デフォルトが気に食わない!という代替ならリーズナブルでカラバリも豊富なGA2か3、軽量かつ特徴的なカラーがあるGXR等が良い選択肢ではと思われます。フィット感が気に入るのであれば街乗りならどれでも大丈夫。

乗車頻度が高く1時間以上のロングライドも珍しくない、ビワイチとかも行ってみたい!ということなら、GP1、GS1、GA3、GT1等のウイング大きめのものを選びたいところ。円筒形グリップの親指の付け根や掌の痺れは、グローブでフォローするにも限界があります。個人的にはGS1のバランスの良さは大変気に入っています。

バーエンド(ツノ)は好みがあるのでコメントしにくい。持たなくなったので辞めた、という人もよく見かけますし。トグスも慣れると手放せなくなりますが、最初は違和感があるかもしれません。同様の理由でGT1もある程度乗ってからでないと判断難しそうです。

また乗り心地以外の要素として、K3は構成によっては折りたたみに干渉する場合があるので要注意。調整できないということはまずないですけど。

できれば試乗車等で試してみたいところですが、そこまでバリエーション豊富な試乗車揃えてるところもないのでなかなか難しいですし、長時間乗るわけにもいきません(ミニベロのサブスクなんてサービスもありますが)。店頭で触ってみて、自分の直感を信じましょう。

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