K3、蒲原自転車道を往く

大規模自転車道
この記事は約11分で読めます。

蒲原自転車道は、新潟県阿賀野市小松から新潟市有明大橋までを結ぶ約45kmの大規模自転車道です。途中の未整備区間が非常に長く、新潟に2本ある自転車道のうち忘れ去られた地味な方。自然のチカラを思い知らされます。2023年5月1日走破。

蒲原自転車道の基本情報

正式名称は新潟県道490号安田新潟自転車道線 
通称蒲原自転車道、頻出表記は安田新潟自転車道
昭和49年(1974年)から整備が開始され、計画延長は45km、現在の整備済み延長は約19.6kmと推測されます。

起点阿賀野市小松
終点新潟市有明大橋(有馬大橋東詰)
大規模自転車道とは?

起点最寄りはJR磐越西線馬下駅から約4km。ただし1時間に1本クラスの無人駅で、新潟から直通する列車も1日数本。終点はJR越後線の関屋駅または青山駅から1km、新潟駅まで自走しても5km。空路なら新潟空港まで12km少々になります。

新潟県阿賀野市小松を起点とし、阿賀野川右岸堤防上の車道沿いに河口へ向かって下ってゆきます。新潟東北自転車道を過ぎたところで専用道へ入り、県道3号線に合流したところで西進、新潟東西道路、新栗ノ木川沿いを経由し再度県道3号線に合流し新潟中心部へ。萬代橋を渡って信濃川左岸を遡った後、関屋分水路を河口側に進み終点の新潟市有明大橋東詰へ到達します。

蒲原自転車道を走る

時はGWの中日。岩手に続きJALスマイルキャンペーンで片道6000円空の旅、幸い天気も危ういながら保ちそうで、早朝から一路飛行機輪行空の旅へ。自転車旅行の一ヶ月前先行予約は、お天気次第で旅券投げ捨てのリスクを受け入れなければなりませぬ。

日本アルプスを越えていざ新潟
やってきました新潟空港

格安航空チケットではいつものことですが、GWともなれば人気路線は即完売、どこか無いかと時間枠を調整してみた結果、新潟をピックアップ(秋田と最後まで迷った)。しかし発着時間の関係で走れるのはせいぜい1本。

新潟には2本の大規模自転車道があり、久比岐自転車道はPRキャラクターを打ち出していたり、公式サイトが出ていたり、押し出しが強く情報に事欠きません。しかし地理的に富山の自転車道と近く、一体制覇可能なため、今回は孤独なもう1本の方、蒲原自転車道を走ることに。こちらはネットで検索してみても公式サイトや言及が全く無く、個人の記事も殆ど見当たらず、旧国交省地図でも全体の半分が未整備区間という有様で、完全に忘れ去られた自転車道と化しています。というわけでその謎を解き明かすべく、一路新潟に足を踏み入れたのでした。

空港からバスで新潟駅へ移動、鉄路で起点最寄り駅の馬下駅を目指します。しかし新潟駅から馬下までAMで着ける電車は1本のみ。予定段階で「すべて予定通り新潟駅について乗り換え時間2分」という初見殺しなスケジュールにトライしたのですが、新潟駅は大型工事中でどこから乗るのかわからん!とやっていたところ、めでたくホームに降りる階段で無情の発車音を聞く羽目に。自転車抱えてダッシュとか無理。

仕方なくまずは新津を目指します。

新津駅到着

新津駅で待って馬下行きに乗ると到着は1時間後。一方、自走した場合自転車道を逆走する形で起点まで15km。さすがに1時間走れば着くわ、ということでK3をセットアップしスタート。

新津は鉄道のまちだそうな

新津駅を出て阿賀浦橋を渡り阿賀野川を遡るのですが……自転車道のコースのはずなのにそれらしい目印が何も見えず、起点に到達する前から嫌な予感がひしひしと。駅を出てから40分ほどで起点に到達、そこに待ち受けていたものは。

生い茂る草木に「なんじゃこりゃー!」

地図によると起点はこの100mほど先にあるはずなのですが、道がほぼ自然に還っております。折れた枝が道を塞いだりしているものの、奥の方を覗いて見ると通れるかな……?いや通れないかな……?みたいな感じ。自転車はさすがに進める気がしなかったので、徒歩で奥へ進んでみることに。

大自然の侵食は受けているものの舗装はされている

進んでる間、頭上や耳の横をブンブンとハチがホバリングしまくっております。万一スズメバチだった場合は警戒行動なので引き返すところですが、クマバチだったので腰引けつつ進みます。伸びまくった木の枝やら草葉やらがバシバシ体に当たりますが、進んで進めないことはない。伸び放題の雑草や枯れ葉に覆い隠されてはいるものの、路面もしっかり舗装されてます。

自転車道か……これが……?

進むとますますジャングルっぽい。ほぼ廃道。ただ鉄柵はしっかりしており、道幅も2mほど確保されていますので、昔はなかなか立派な道だったであろうことが窺えます。今は奥すら見えないですが。

鉄柵は妙にしっかりしてる

進んで大丈夫?と不安になるものの、舗装は変わらずしっかりしているので信じて進みます。一応、事前にGoogleマップで見た時に何やら屋根っぽいものがあるのは確認してましたし。

すると。

開けた空間の奥に東屋と銅像

起点と思しきぽっかりと開けた空間が現れました。奥に見える銅像が企業創業者の像だったので、Googleマップで見えていた上の段に見える東屋は隣の工場敷地のようです。上段側は植木の剪定もしっかりされてますし。

一方、下段の起点側は周囲を見渡すも標識といった洒落たモノは一切なし。かつては蒲原自転車道の起点として舗装・整備されたものの、その後整備が進まず放棄されているのであろうと推測出来ます。もしかしたら標識やらはメンテが出来ず撤去されたのかもしれませんが。果たしてどのくらい放置されたものやら。

ちなみに、起点と称してはいるものの、こちらの地区は「小松」ではなく「六野瀬」なので、計画上の起点はもう少し東側で、ここは途中の休憩所的スポットだった可能性があります。実際Googleマップで見てみると小松地区にやたら路面が立派な車止めのあるそれっぽい箇所が見受けられます。

とにもかくにも再びハチの羽音に怯えながら引き返し、K3でスタート。
なんの変哲もない道路を200mほど進んだところで標識を発見。

起点方向を指して「通り抜けはできません」

すっかり色の落ちた右下の丸い標識は自転車歩行者道の標識、青い案内板のテープで隠された部分には「この先350m展望広場」と記載されていました。展望広場だったのか……今は見通しゼロですけど。

このあたりは旧国交省地図でも整備済みになっていた区間、と言っても1kmほどで終わってしまい、そこからすぐ普通の車道に。

短い整備区間も荒れ放題

阿賀野川の清流は大変気分が良いのですが、道はめっちゃ普通の一般道。途中、右手に春から秋の間だけオープンしているサントピアワールドの観覧車が見えたりします。冬やってないあたり実に雪国ですが、前身の安田アイランド開園が1976年と自転車道の整備開始時期と被ります。

阿賀野川の清流を横目に白線すらない一般道を進む
走りながら右手を見ればサントピアワールドの観覧車

安田橋手前で河川敷側へ降り、専用区間になります。が、1kmほど進むとすぐ上がってしまい、また一般道を走ることに。

安田橋後の専用区間、奥に見えるのが阿賀野橋

走っていると度々河川敷に降りる分かれ道が見えるのですが、先を見るとどう見ても未舗装だったり砂利道だったり、そもそも続いているかが怪しいレベルだったりで、結果ずっと一般道・車道を走ることになります。

降りた先はどう見ても未舗装

当然のように標識などの類は皆無。路肩も狭く、横をトラックが通行でもしようものなら煽られて土手に転がり落ちかねません。自動車側も怖いので反対車線まで避けてくれたりしますが。

せっまーい路肩

交通量は決して多くないですが、皆無というわけでもないので結構を気を使います。阿賀浦橋が見え始め県道586号線と合流するあたりで歩行者自転車道が登場。しかし阿賀浦橋までの1kmほどであっさり終了し、橋を越えた後は再度一般道へ。

荒れまくりの歩道、このあたりは車の交通量も多い
1km近い阿賀浦橋、手前で車道と一緒に右に折れて橋の下を通過

ここからはひたすら左右に田園風景の広がる車道を走り続けます。海に向かっているので山もなく、とにかく広い視界、のどかな光景、ロードでかっ飛ばすならそんなに悪くないかもしれないですが。当然休憩所などという気の利いたものもありませんが、新横雲橋手前で右手に入れば2022年8月に出来たばかりの「道の駅あがの」のカフェやレストランで休憩出来ます。

ほっそーい側道の道を車に気をつけつつ
広がる田園風景と寄らなかった高森の大欅なるスポット

13kmほど走り、日本海東北自動車道の高架手前で左手下に茶色の舗装路が現れ、降りる手段が無いなと思っていると高架を通り過ぎたところで合流。国交省河川事務所手前で反対側に下りてゆくので、それに沿って進みます。

この国交省河川事務所前を右に渡る
久々の専用道を進行

臙脂色の専用道は土手下を進み、JR白新線高架下を抜けたところで……。

あの標識は!?
初めて目にする安田新潟自転車道標識

起点から大凡27km。ここにきてようやく自転車道の存在を証明する標識が初登場しました。わりと真面目に「ラピュタは本当にあったんだ!」くらいの感慨です。臙脂色舗装に従って進むと、この後はわりとぽんぽん同様の案内板を見かけることになります。

市街地に入ると無茶苦茶主張が強くなった
泰平橋を渡り県道3号線沿いに新潟中心街へ
市街地入るなりめっちゃ頻繁に案内してくる

市街地に入るとこれまではなんだったんだというくらい緑の案内板がめちゃめちゃ頻繁に登場します。泰平橋を渡った後、新潟バイパスをくぐった後県道3号線を離れ、新潟バイパスを左手に見ながら西進。

コースの通り方まで案内、奥の道はやや自転車道っぽい

信越本線の踏切を越えて新栗ノ木川に当たったら今度は川沿いに河口方面を目指すのですが、このあたりは案内が少なくルートを知っていないと迷いやすい。というのも、栗ノ木バイパス周辺は大規模工事を行っており、工事だらけだわ川の流れは付け変わってるわで看板や道の流れが一部変わっている模様。

栗ノ木バイパス周辺は地形変化が激しくややルートが怪しい

新栗ノ木川沿いを進み、再度県道3号線に合流したら西進、途中の廃線跡などが目を引きます。

途中通過する2010年に廃線となった貨物支線跡

最悪、とにかく新潟駅前を目指せばなんとかなるので、ここでちょっと寄り道。

どっかで見たAAみたいな看板
新潟B級グルメとして有名な「バスセンターのカレー」美味し

ルートは新潟の玄関口こと東大通りを北上、萬代橋を渡り、信濃川左岸緑地へ入ります。

新潟のシンボル、国指定重要文化財萬代橋を渡る
信濃川河川敷緑地へ、頭上の雲が厚い

ここからはいかにもな河川敷の遊歩道コースに。ちょっとこの辺で空模様が怪しく、パラパラと雨に振られる羽目に。そして道路脇には初めて安田・新潟自転車道の案内図を発見。

初めて自転車道の全図が!?
と思ったら近隣一部だけでした
「平成5年人間道路会議賞」受賞らしいのですが表彰の対象区画が一部過ぎません?

度々案内図やポストが設置されており、市街地部分の整備はわりと力を入れている様子が見て取れます。ルートは河川敷沿いにそのまま信濃川を遡り、関屋分水路方面へ。萬代橋を渡ってから、ゴールまでは5kmほど。

本川大橋の堰を境に道は関屋分水路方面へ
分水路沿いの遊歩道、奥に見えるはゴールの有明大橋
有明橋東詰の終点(起点)ポスト

有明大橋をくぐった後、折り返して坂道を上がれば自転車道起点ポストがあり、ここでゴールです。走行距離45km少々、時間にして休憩を含まず3時間15分。近くの小嶋屋総本店でへぎそばをいただいて宿に帰投。

新潟名物へぎそばとたれカツ御膳

蒲原自転車道、これにて終了。翌日、新潟駅周辺の宿から新潟空港まで自走し、帰路に就きます。

蒲原自転車道のまとめ

前半は「ひでぇ!」の一言、というかもはや自転車道ではなく路面状況どころでの話ではない。河川敷に整備しようとした気配は見えるのですが、全く進まなかったものと推測されます。坂が無く完全フラットですし、大半車道を走る関係で非常にロード向きではありますが……。

おそらくは旧安田アイランドなどの行楽地を目的として計画はしたものの利用が見込めず、冬は積雪でそもそも通れず道も荒れますし、予算もあって放置されたであろうことは容易に推測され、なんか道を作ろうとした形跡は見えるものの大半が自然に還ってしまったものかと。

後半市街地は市民の足として標識などが一気に整備されますが、栗ノ木バイパス周辺の大規模開発の関係で道を見失いやすく、前半とは逆に発展が仇に。路面に一貫性がなくそもそも信号と歩行者が多い都市部なので、ロードで飛ばす道ではなく、信濃川沿いなどは兼遊歩道としていい感じ。

令和4年度版阿賀野市市道網図を確認する限り、展望広場周辺に県道安田新潟自転車導線の記載があるので阿賀野市側も県道指定を外されたりはしていないようですが、現時点実質の起点は阿賀野川公園と見做すのが良さげ。「安田新潟自転車道」なのに安田まで行けない。更に計画上の起点である小松に自転車道表記は見当たらず、何が正しいのかは歴史の闇の中に。

旧国交省から写真を拝借して新旧比較。時の流れを感じていただきたい。

起点側が「計画倒れに終わった大規模自転車道」を象徴するかの如き有り様で、終盤都市部の充実ぶりとの対比、コントラストが非常に印象に残る自転車道であります。

タイトルとURLをコピーしました