K9X、しんきろう自転車道を往く

大規模自転車道
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しんきろう自転車道は、富山県富山市から下新川郡朝日町までを結ぶ62.5kmの大規模自転車道です。ナショナルサイクルルートである富山湾岸サイクリングコースの一部であり、片手に富山湾とその先の能登半島、反対側は立山連峰を臨みながら海岸線を走り抜けるコースとなっています。2024年10月26日走破。

しんきろう自転車道の基本情報

正式名称は富山県道375号富山朝日自転車道線
通称しんきろう自転車道。富山地鉄富山港線岩瀬浜駅からJR生地駅の間がしんきろうサイクリングコースとして設定されています。
計画延長62.5km。昭和57年(1982年)整備開始、整備済み延長42.9km。朝日町川の18.6kmは未整備区間となっていますが、富山湾岸サイクリングコースの一部であるためコースは整備されています。

起点富山県富山市鵯島(県道44号7号交点付近)
終点富山県下新川郡朝日町宮崎(JR越中宮崎駅)

起点最寄りは約2kmのJR富山駅。終点最寄りは目の前あいの風とやま鉄道越中宮崎駅。富山駅は言わずとしれた富山の中心駅で、北陸新幹線利用で東京から2時間、大阪から3時間。あいの風とやま鉄道ではサクルトレインも運行されています。

富山県富山市鵯島の県道44号7号交点付近を出発。富山市内を海に向かって北上し、以後ゴールまでほぼ前線海岸線沿いを走行します。海岸沿いを東へ向かい途中複数の駐輪場、道の駅ウェーブパーク滑川、ミラージュランド、道の駅蜃気楼を通過し、JR生地駅まで到達したところでしんきろうサイクリングコースが終了。以後は富山湾岸サイクリングコースの案内に従って再び海岸線を進み県道109号線60号線と進んだ後、終点下新川郡朝日町宮崎の越中宮崎駅へ至ります。

起点から850mほどで富山庄川小矢部自転車道と接続しています。また、終点からさらに3kmほど東進した先に富山湾岸サイクリングコースの起点があり、大半の区間がコースとして再利用されています。

しんきろう自転車道に至るまで

しんきろう自転車道の起点は富山駅から2kmちょいとすぐ近く。元々は富山庄川小矢部自転車道と併せて富山を中心にした120kmという長大なコース設計を企図していたのだろうなと推測されます。

前日に富山庄川小矢部自転車道を走り終えて富山駅近くのホテルで一泊。富山駅で目当てのスポットを確認した後、路面電車を横目に、神通川を越えて現地に向かいます。

目当ての富山駅前ゆるゆりマンホール

しんきろう自転車道を走る

起点は神通川沿いの堤防道路、県道7号富山八尾戦と県道44号富山高岡線の交点から少し入ったところにあります。

起点

しんきろう自転車道起点
県道44号線側の広場

特に案内図などはありません。富山県の全図に掲載してある写真やストリートビューで2012年頃の画像を見ると、今は広場になっているところも元々道で、ここが起点だった模様。ちらっと自転車歩行者道標識も写ってます。

周囲を確認してスタートしますが、早速路面が荒れます。古い道あるあるですが、元々白線引いてあっただろう箇所に草が突き抜けて生えてきてます。アスファルトの劣化早めるんでしょうかね。そして更に走行感を著しく悪くしている元凶がこちら。

街路樹が成長し路面を破壊

この神通川左岸の桜並木は自転車道整備以前の昭和50年頃に植樹され、今では富山市を代表する桜の名所となっています。が、成長しすぎて縁石とアスファルトを押しのけてしまっており、該当箇所は走りにくいことこの上ない。地元の自転車道でもこれにやられて一度転倒した経験があります。手に負えなくなると切られてしまうことも多いですが……。

1kmほど走ったところで神通大橋を渡って富山駅方面へ。ここの道終端処理はもうちょっとなんとかなりませんか。

突然細くなって終了する神通大橋手前の自転車道

神通大橋は上流側下流側2本の橋が並走しており、上流側は老朽化等の理由により2027年頃から架替工事の実施が計画されています。下流側の橋は15年ほど若く広い歩道も整備されています。

神通大橋下流側の歩行者自転車道

橋を渡ったら富山駅手前けやき通りで北上。JRを越えて県道208号小竹東富山線と交差したところで東進。途中路面電車の富山地鉄富山港線と一時並走した後、県道172号線八幡田稲荷線と合流したところで富山中心街を背にして北上。

ここから7kmほど県道沿いの歩行者自転車道を進みます。神通大橋渡ってから一切標識などはなく、ナショナルサイクルルート関連の表示とも異なる進行なので、事前知識が無いと走れません。

県道172号線沿いの歩行者自転車道

特にイベントもなく走りやすくもない道を進行し、県道1号富山魚津線との交差点手前で初の自転車道表示が登場します。

最初の富山朝日自転車道表示

ルートとしてはここからまっすぐ海岸に出ますが、少し寄り道して海岸通交差点を西側に、路面電車岩瀬浜駅方面に向かいます。

岩瀬浜駅

富山地方鉄道富山港線の終端駅である岩瀬浜駅。こちらに「しんきろうサイクリングコース」の起点案内板が設置されています。

岩瀬浜駅前のしんきろうサイクリングコース案内板
しんきろうサイクリングコース案内板拡大

県道関連表記はないので一応別コースですが、旧来のしんきろう自転車道や富山朝日自転車道名義での案内板はこの後も設置されていないので、こちらが実質本自転車道の案内板。富山湾岸サイクリングコースと重複する形であいの風とやま鉄道生地駅までの間が「しんきろうサイクリングコース」として整備されています。

改めて折り返し海岸通交差点に向かいます。その手前に富山朝日自転車道の案内表示がありました。古い案内板らしく旧来の「しんきろう自転車道」の表記を確認。

富山朝日自転車道の案内板に「しんきろう自転車道」表記

海岸通交差点(11km~)

海岸通交差点から海岸方面へ。このあたりから本格的に自転車道っぽくなってきます。

海岸通交差点から海岸方面への入口
海岸方面へ進行

大広田駐輪場(12km~)

海岸沿いのルートに入ってすぐ、陸側に大広田駐輪場を確認。すぐ隣に大村緑地が広がっており公衆トイレや水飲み場が設置されています。最近、水飲み場は衛生上の理由から蛇口等が取り外されてることも多いですが。

大広田駐輪場の遠景
大広田駐輪場に設置されていた富山湾岸サイクリングコース案内図

再び進行を再開。海岸沿い防風林の松林はこの後も基本ずっと並走することになります。

富山湾沿いの松林と字tネ車道路面状況

一部渡河のタイミングでは海岸沿いの道路が途切れるので県道1号富山魚津線と合流して橋を渡り、えっちらおっちらと進行。エリアは富山市から滑川市に移ります。

滑川市の市境表示

コースが長いこともあってルート的に結構な距離一般道を走行します。自転車道自体の案内は殆どないので、基本的には富山湾岸サイクリングコースの青矢羽準拠。

港近くの一般道走行区間

途中、通りすがりに謎な自販機を発見。

パンダ缶自販機

パンの缶詰「パンダ缶」の自動販売機。上段はホリ◯モンのエナジードリンクとか無駄に情報量が多い。ちなみにパンダ缶自体は富山駅のお土産ショップとかで普通に買えます。

道の駅 ウェーブパーク滑川(22km~)

滑川市に入ってからしばらく、県道1号線沿いに道の駅ウェーブパーク滑川が見えてきます。道の駅以外にもほたるいかミュージアム、深層水体験施設タラソピアなど複数の施設が併設されたちょっとしたテーマパークとなっています。実際、結構人出も多く賑わってました。

今回は行程上スルーしましたが、当然カフェやレストランもあるので足休めの休憩スポットとしても申し分無し。

左手が道の駅ウェーブパーク滑川、右側がタラソピア

再び道は海岸沿いに入り、松林の先に滑川海浜公園展望台が見えてきます。

滑川海浜公園展望台

ここは行程通じて指折りのビュースポット。展望台に上がり、海側を見れば富山湾の向こうに能登半島が。山側を見れば、雄大な立山連峰が一望できます。

海側に広がる富山湾とその先の能登半島
山側を見れば一直線に伸びた道路の先に立山連峰の雄大な姿

この日は空模様がイマイチですが、一直線に伸びる道路、左右に広がる田畑、奥に見える住宅街と更に奥に聳える立山連峰、と画になる風景が広がります。周辺が開けてるので写真では表現できない開放感がありますね。

この自転車道は全体を通して平坦で、走りやすい一方で高地や高い建物もないので貴重なビュースポットです。

滑川市浄化センター近辺の風景

吉浦駐輪場(26km~)

吉浦浜を走っていると右手に吉浦駐輪場が見えます。例によってお手洗いとお手洗い完備。

吉浦駐輪場

通り過ぎると正面に見えるのが観覧車。道は早月川で上流側に折れまた県道1号に合流して渡河。

正面の早月川とその先に見える観覧車

橋を渡るとその先は魚津市。

魚津市の市境表示版

ミラージュランド(28km~)

橋を渡ってすぐ海岸沿いに進むと、右手に先程の観覧車が見えます。富山県内唯一の遊園地で、その名は蜃気楼から取ったミラージュランド。入場料は無料で、魚津水族館も併設される施設です。北陸や東北などの雪国は、降雪のせいで屋外アトラクションの運営維持ができないためかこの手の施設は少ないのですが、観覧車は66mとなかなかの規模。

ミラージュランド近景

道の駅 蜃気楼(31km~)

魚津港を過ぎると見えるのが道の駅蜃気楼。道の駅としての規模はそこそこ、朝市や、その場で食べられる浜焼きのコーナーがあります。時間的にここで昼食を摂ることに。

左手に見える道の駅蜃気楼

個人的に魚介類はらべられないものが多いのですが、せっかくなのでレストラン喜見城で海鮮丼を注文。名物は白エビ丼なのですが、2024年の能登半島地震の影響で極端な不漁が続いており、提供中止となっていました。

海鮮丼

前述の通り魚介は苦手なのですが、ふつーに美味しかったです。現代では輸送技術が進んでるので都市部でもそこまで品質低下してないはずなのですが、港町とか直参の魚介類は何故か美味しいんですよね。

蜃気楼が現れたときの写真

運よく蜃気楼が見られたら本当にラッキー。腹ごしらえと足休めを終えて走行再開。

経田駐輪場(34km~)

道の駅蜃気楼から経田海岸までの中間地点あたりに経田駐輪場があります。水飲み場に東屋、ベンチあたりでお手洗いは無しの簡易な休憩所。

経田駐輪場

経田海岸を過ぎ、布施川・片貝川の河口部分でお約束の工事通行止めが発生。河川堤防部の補強工事です。

堤防沿い工事につき通行止め

大人しく手前まで折り返して県道2号線まで出て渡河。布施川を越えると黒部市へ。

黒部市の市境表示

ちなみに黒部市は山側にも広い市ですが、有名な黒部ダムは黒部市にはありません。黒部川にあるから黒部ダムなので、実際の場所は黒部川上流の更に山側です。

ここで、見落としがなければ初めての県道375号富山朝日自転車道線のヘキサ表示を発見。

富山朝日自転車道の県道表示

途中の表示が乏しいので、なんだかんだ見つけると安心します。過去の整備状況では黒部市が東端で入善町に入ると途切れるので、黒部市中はしっかり整備する方向だったのかなと。県道とはいえ市の協力必要ですしね。

立野駐輪場(40km~)

黒部市総合公園近くに立野駐輪場が設置されています。お手洗い完備のしっかりした休憩所。コース上から1km少々外れると道の駅 KOKOくろべなどもあります。

立野駐輪場

程なくルートは海岸沿いを離れ生地駅方面に向かいますが、道中、富山県なのに何故か北方領土資料館があります。北方4島からの引揚者が北海道に次いで多いのが理由だそう。尚、北方領土関連のマスコット北方領土エリカちゃんはXアカウントもありますが、本当に公式で大丈夫なのかと思うエッジの立ちっぷり。

北方領土資料館

生地駅(43km~)

市街地を進んで生地駅へ。あいの風とやま鉄道生地駅前にしんきろうサイクリングコースの案内板があり、ここが東端設定です。

生地駅前のしんきろうサイクリングロード案内図

富山湾岸サイクリングコースのブルーラインは普通に続いていますので、線路沿いに進み黒部川に向かいます。

下黒部橋とあいの風とやま鉄道

コース上でも一際の大河である黒部川。ずっと上流まで遡れば有名観光スポット黒部ダムですが、当然見えるわけもなく。を渡ればエリアは入善町へ。

入善町堺表示

過去の路線図によればこのあたりから先が未整備区間ということで、実際殆どの区間が他の県道等との重用区間であったり、海岸線の堤防道路であったりになります。

海洋科学研究所前

海岸沿いの堤防内側の道を進行。ここから先、しばらく左手に堤防、右手側に防風林の景色が延々と続きます。10km近く本当になにもないので、気分よくは走れるのですがちょっと飽きるかも。

海岸沿いの防風林の間の風景

走っていると巨大な風車が視界に現れます。右手前が入善浄化センターの風量区発電設備の風車で高さ103m。左奥が2年ほど前に建設された入善洋上風力発電の風力発電用風車で、高さ152mの風車が3基ありそれぞれ『new善風車』『入善小太郎』『入善丸』と命名されてるそうな。

迫ってくる風車は走行のアクセントにより感じです。

海岸沿いに設置された風力発電風車

洋上風力発電所のあたりから海岸を離れる形で県道189号線を進み、赤川橋を渡ったところで最終エリア朝日町へ。

朝日町堺表示

県道60号線に沿って田園風景、住宅地を進みますが、このあたり横断歩道はあれど全く信号がありません。気分よくスイスイ進みますが、このあたりは周辺にカフェや蕎麦屋さんなんかもあるので寄り道も一興。今日は時間が怪しいのでスルー。

先に信号も見えない車道沿いの歩行者自転車道

再び海岸が見えてきたところであいの風とやま鉄道の鉄路も合流。ちょうどそのあたりで一本山側の道に入ると、松尾芭蕉が富山を詠んだ句碑が建っています。

海岸沿いで鉄道と併走

宮崎港周辺のえんじ色の舗装道路が見えたらゴールはもうすぐそこ。

宮崎漁港の臨港道路

終点/越中宮崎駅

あいの風とやま鉄道の越中宮崎駅前でゴール。そももそも未整備区間なので特に表示や案内もなく、一般道路なので正式な終点は不明。

越中宮崎駅前
越中宮崎駅前、ヒスイテラス前

ヒスイ海岸は砂浜ではなく小石の海岸で、ヒスイの原石も採れるようでその名がついています。瑠璃の宝石ごっこができますね。行った時はまだ放送前でしたが。ヒスイテラスは展望や物販、レンタサイクル等も備えられた拠点になっています。

本自転車道自体はここで終了ですが、せっかくなのでさらに3kmほど東、富山湾岸サイクリングコースの起終点を目指します。

ブルーラインはまだ東へ

富山湾岸サイクリングコース起終点

海岸沿い、特に何もない小さな広場に富山湾岸サイクリングコース起点が設定されています。

富山湾岸サイクリングコース起終点

周辺には全く何もありません。もうちょっとこう何かないですかね……。反対側の起終点は石川県との県境ですが、こちらも大概僻地で何も無いので走破計画立てる際は色々と考えるところ。輪行とか超無理。

越中宮崎駅から輪行で撤収、大阪への帰路につきます。

しんきろう自転車道のまとめ

既に富山の自転車道整備はナショナルサイクルルート側に重点が移っており、この自転車道自体は使えるところを再利用しているので、起終点の整備等は絶望的。一方でそれ以外はしんきろうサイクリングコースとして整理されてますし、ナショナルサイクルルートにも含まれているため迷うことはありません。

途中の駐輪場はトイレ併設のところも多く、道の駅等のスポットも多いため足を休めるには困りません。ただし北陸で人口密度が低いところなので自販機や売店等はやや限定的。

60kmを越える延長にも関わらず高低差がほぼないので気分よく走れる点は高評価。道は専用道と一般道を行ったり来たりしがちですが、路面状況として困るようなところはほぼ無し。余裕があれば途中道の駅で名物の魚介類に舌鼓を打ったり、ほたるいかミュージアムへの寄り道等も。さすがに蜃気楼は激レアイベント過ぎて期待できないですが。

富山湾岸サイクリングコースを走れば必然的に大半を走ることになり、わざわざ個別に走ることは無いと思われる自転車道です。ナショナルサイクルルートの半分を占めていますので、走りつつそんな自転車道もあったんだなあと思い起こしていただくくらいがちょうど良い気がします。

参考にした先人の足跡
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