若狭自転車道は、福井県小浜市門前から高浜町事代までを結ぶ40.3kmの大規模自転車道です。「海のある奈良」と呼ばれる小浜の寺社を巡り、国定公園に指定されるリアス式海岸の若狭湾を臨みながら海岸線を駆け抜けます。2024年9月13日走破。
若狭自転車道の基本情報
正式名称は福井県道802号小浜大飯高浜自転車道線。
通称若狭自転車道。
総延長40.3km、昭和55年(1980年)整備開始。現在も数kmほどの未整備区間があります。
起点 | 福井県小浜市門前(明通寺前) |
終点 | 福井県高浜町事代(城山公園前) |
起点最寄りはJR小浜線東小浜駅からおおよそ5km。ちなみに小浜線は全線交通系ICが使えません。終点最寄りは同じく小浜線若狭高浜駅でおおよそ1.2km。2024年3月に北陸新幹線が敦賀まで延伸されたため、関東からは北陸新幹線経由、東海道新幹線経由、いずれもほぼ同じ時間で到着します。
福井県小浜市門前の明通寺前を起点とし、松永川沿いに東小浜駅方面へ。小浜線を超えてからも松永川、合流する北川沿いに進み、北川橋を過ぎたところで対岸に渡り羽賀寺へ進行。ぐるっと回って再度北川沿いに戻り、若狭湾に出た後は若狭湾沿いを西進。幾つもの海水浴場を通り過ぎた後青戸の大橋を渡り、湾沿いを進み終点にある福井県高浜町事代の城山公園へ至ります。
コース中盤から後半の大半が福井県が推進するわかさいくるのコースと重複します。
- 国会図書館アーカイブ(旧国交省サイト)
- 福井県道802号小浜大飯高浜自転車道線
- 健康づくりにサイクリングに出かけましょう | 福井県ホームページ↗
※ふくいサイクリングルートマップ14番が小浜大飯高浜自転車道 - 【公式】福井県 若狭湾サイクリングルート「わかさいくる」サイト | ふくいドットコム↗
若狭自転車道に至るまで
あまりの猛暑にお盆の夏季休暇をずらした9月も半ば。秋が見え始める残暑の季節ですが、この日の気温は34℃、残暑と言うには厳しい暑さです。とはいえ引き籠もってるわけにもいかず、近畿の北側、福井と京都の自転車道へ赴くことにしました。総走行距離の関係でK3ではなくK9Xで出動。
西日本の誇る新快速に乗って大阪からのんびり敦賀を目指し、敦賀からは小浜線に乗り換えて東小浜駅へ。地元からICOCAで乗車していたところ、小浜線は全線交通系IC非対応という罠がありまして、駅員さんに現金支払い精算することに。
東小浜駅&小浜市サイクリングセンター
立派な駅舎の東小浜駅には小浜市サイクリングセンターが併設されており、丁度返却に来ている人がいました。国交省サイトに写真が記載されている施設ですね。
写真にも関連する内容が写ってますが、北陸新幹線の敦賀-京都間が開通した暁には、この1kmほど西に小浜新駅が爆誕の予定となっています(2024年8月時点案)。阪神間からここまで来ようと思うと一旦敦賀まで上がってから折り返してこなきゃいけないので、開通するとだいぶ近くなりますね。まあ、開通するのは20年は先ですが……。
何はともあれ。晴天猛暑の中、5km先の起点を目指し出発です。
イエス・ウィー・キャン!
若狭自転車道を走る
起点は明通寺に通じる道と県道23号線の合流ポイントあたり。
更に明通寺方面に進むと、明通寺正面に明通寺休憩所と若狭自転車道の案内板が立っています。
明通寺休憩所(0km~)
猛暑にもかかわらず少しひんやりするような、音の少ない静謐な空間となっております。休憩所はかつての写真と比べてみるとポストアポカリプスの雰囲気。トイレは使えるのかどうか試してません。
坂上田村麿創建と伝わる明通寺はには国宝である本堂、三重塔が佇み、重文の仏像などを多数擁しています。この日も車やバイクでやってきた参拝客がちらほら。少しだけ覗いて、自転車道へ戻ります。最初は県道23号線沿いに進行。
すぐに専用道区間に入り松永川沿いを進みます。
車道は交通量も多くなく、松永川沿いは自然にあふれる山間を走ること3.5km、国道27号線手前に架かる橋が最初のコースミスポイント。
これを見落としてまっすぐ進むと国道27号線にぶつかり、真正面はダートで道を失います。
住宅の間の細い道を抜け、国道27号線はアンダーパスで通過。なので、普通に国道に出てしまうと合流できません。抜けた先は視界の開けた田園風景になります。
コース沿いに進むと土手を上がり遠敷(おにゅう)川へ出るので、すぐに見える自転車道専用橋を渡って左岸側へ。
土手の上を進むとすぐに小浜線にぶつかり、土手を降ります。
降りるとすぐ小浜線の下をくぐる架道橋が掛かっているので、そちらへ進行。
明通寺休憩所にあった概略図では若狭の里公園の西側を通るようなルートになっていましたが、そちらは破棄されたようで、県道指定もこちらのルート。一瞬道路脇の草木が伸びててヤな予感がしましたが、通れるだけの道はちゃんと確保されており緩やかに登りつつ堤防上へ。
しばらく堤防上を進み、起点から9kmほどの地点。舞鶴若狭自動車道の高架を過ぎた次の橋で対岸へ渡ります。うっかりしてると見落としますが(というか見落として2kmほど距離ロス)、近畿自然歩道の案内が目印。近畿自然歩道自体は非常に範囲が広く、近畿圏の他の自転車道でも頻繁に見かけるのですが、特にこの自転車道では標識がないところで目印になっている等リンク度が高い。全部ではないですが。
写真に後ろ向きの看板が写ってますが、すべて草刈り作業中の表示です。前後で業者さんが下草を刈っておりました。これを維持ししていただけるから我々がスムーズに走れるわけで暑い中感謝。そして橋を渡ったら広がる田園風景の中を直進。
しばらく進むと地面に「トマレ」の白線文字が書かれている十字路を左折し、更に2つ目の十字路で右折。この辺案内表示はなくノーヒントで難易度高いですが、適当に進んでも最終的にそれっぽい歩道にぶちあたるのでなんとかなりはします。
自転車道は田園風景を抜けて山の方面へ。
羽賀寺(13km~)
軽い上りをこなすと羽賀寺前に着き、自転車道案内図に駐輪スペースなどがあり、階段を上ればお手洗いもあります。駐車場には複数の参拝者と思わしき乗用車が複数停まっておりました。
羽賀寺は創建716年と伝わる真言宗の寺院で、本堂と本尊が重要文化財に指定されています。コースが大きく迂回しているのはこの羽賀寺を目指していたためで、ルートは再び北川方面へ。吉備高原自転車道もそうでしたが、名所めぐり等の目的で大きく迂回するコース設定がたまにあります。
ここでコースミス。山道から降りて田園ゾーンに出たところで、水路の田園側を走らなければいけなかったところ、車道側を走ってしまいました。正規ルートを走ると丸山橋のところで自転車道が合流してきます。猛暑で熱暴走するため頻繁にスマホを覗くわけにいかないという……。
丸山橋で北川、多田川を続けて渡り、多田川沿いの自転車道を進行。
わりと緑多めで路面状況もいい区間ですが、橋が見えてきたあたりで足元に見慣れた青いラインが。
多くの自転車道で定番になったブルーラインですが、こちらは駅と「(自転車)コース」だけの表示。
特に標識などはありませんがルートは左折。国道162号線沿いに一般道を進むと、すぐに橋にぶちあたる……のですが、大手橋は老朽化のため長らく架替え工事中。横に仮設橋が架かってるので歩行者自転車はこちらを進みます。
小浜NTT前交差点で県道24号方面に右折するのですが、交差点にはコース上初のコンビニがありサイクルラックが設置されています。距離的にも起点から17kmほどというところでいい感じの補給ポイント。立ち寄って水分補給と軽い休憩。
交差点は海岸側に進みますが、自転車道自体の案内はありません。が。
敦賀から高浜までを結ぶ、126.8kmの若狭湾サイクリングルート「わかさいくる」といつの間にか合流しています。先程のブルーラインはこのわかさいくるとの合流を示唆するものでした。この後も終点までほぼ並走するのですが、わかさいくるの方は比較的走りやすいルートを通るため、若狭自転車道としては素直に乗っかるとコースミスする箇所があります。
コースは海岸沿いに入る、台場浜公園手前の交差点を左折。わかさいくるの表示と、近畿自然歩道の表示が両方揃っています。
ここからしばらく海沿いの気分の良い道が続きます。左手には住宅街、右手には「人魚の浜」と小浜湾。路面状態も大変よろしく快適空間。写真からは暑さは伝わりませんが。
小浜公園を過ぎたところか左手が山肌に変わり、道が曲がりくねったいかにも岬っぽいゾーンへ。
海岸沿いのルートにありがちですが、ゆるやかな勾配があり上り30m斜度3%くらい。大した坂ではないものの、一応ルート上で一番高度を稼ぐゾーンになります。
小浜公園過ぎてすぐに、駆逐艦「榎」の慰霊碑がありました。艦これでは未実装。「ぼくらの駆逐艦・榎―戦後70年の証言―」という漫画作品があります。
進んでると車道と完全に分離し、一段下を走ってるエリアが登場。近辺は展望台があったり観光地として整備されてはいるのですが、車道に合流してお茶を濁すのではなくきっちり2m幅取って整備してるあたり力が入ってます。
とはいえ夏場のお約束。交通量の少なそうな僻地気味の路線ということで、ちょっと草茂ってる箇所がありました。
距離にして3kmほど、緑のエリアが終了し国道27号線及び小浜線と合流します。
未整備区間(22km~)
引き続き海岸沿いに進むのですが、ここから1kmほどは完全な未整備区間になります。国道27号線合流してすぐはちょっとだけ歩道があるのですが、すぐに途切れてしまい非常に狭い路肩を走ることに。そこそこ自動車の通行量があるので、注意が必要なところです。
とはいえ1km程度なのですぐ終了、右手奥に県道235号線表記が見えたらそちらへ進みます。ただし、ここには横断歩道等が無いので、先に進んで信号から折り返してくるか、車通り見計らって軽自動車扱いで曲がってしまうかのどちらか。
一時的に県道235号線上を走りますが、すぐに分離して歩道と標識が登場します。
再び海岸沿いを進行。こちらも緑の多い落ち着いて走れるゾーンになっております。専用道は岡津が近づくあたりで終了して再度県道235号線に合流、岡津に入る手前で再度分離します。
岡津に入る道は結構な切通しになっており、よくここに道通したなと。
岡津に入ったところがコースミスしやすいであろうポイント。切通しを抜けたら最初のT字路に標識が見えるので右折するのですが、なんか農道っぽく見えるので見落としがち。というか見落としました。わかさいくるのコースは曲がらず直進してしまうので、そちらに従うと間違えます。
一旦コースに入ると後は普通に進めますが、すんごいグネグネしてたりグレーチングがあったりちょっと微妙。海岸沿いまで出ると非常に良好な道になっており、通り抜けると船が多数並んでいる岡津製塩遺跡方面へ出ます。
岡津製塩遺跡休憩所(32km~)
ここで、コースミスをやらかします。岡津製塩遺跡前へ出たところで近畿自然歩道の標識見て右折すべきところを直進して国道27号線へ出てしまいました。スマホが爆熱で起動できず地図が見られなかったのと、なんか入りにくかったからというのが理由。
ちょっと時間が怪しかったので、戻るのは諦めてそのまま進むことに。体力・気力的に面倒くさかったとも言います。正規ルートを進んでいた場合鯉川交差点あたりで国道27号線と合流しますが、県道とは思えないなかなか凄い道を通ることになります。
しばらくは国道27号線及びJR小浜線沿いを走ります。このあたりも未整備区間でちょいちょい歩道がなくなったり路肩が狭くなったりしますので走行には注意が必要。また、道中にある鯉川ビーチ、長井浜海水浴場はオフシーズンなので入口が閉鎖されており、見えてる自販機やお手洗いが使えません。
それをすぎるとドラッグショップやスーパーが並ぶ若狭地方指折りのリゾート施設うみんぴあ大飯があり、道の駅うみんぴあ大飯や成海緑地公園など休憩に最適。
青戸の大橋(36km~)
うみんぴあ大飯を過ぎてすぐ、青戸の大橋で若狭湾を越えます。ちなみにここから終点まで近畿自然歩道の「青戸の入江深勝のみち」と大半が重複しており、青戸の大橋たもとに半分埋もれる形で標識が立っています。
わかさいくるでも「絶景ロード」として紹介される、743mの自動車歩行者橋、いざゆかん。
せっま!!!!
こんなとこ走ってうっかりペダル引っ掛けでもしたら海へ真っ逆さまも有り得ます。絶景どころか絶叫ですわと。さすがに車道を走りつつ、後ろから車来そうなら歩道に上がる方向で対応。そこそこ交通量あるんですよね。
青戸の大橋を渡ると、歩道に自転車道表記があり間違ってないことを再確認。地元の方は見かけなかったですが、皆様はママチャリであれを渡っているのでしょうか。
気を取り直して、県道266号線に沿って進行します。こちらのエリア周辺は緑と海岸に挟まれたそこここに、関電の発電所やごみ処理施設等、人里近くには置きにくい施設が並びます。
犬見休憩所?(37km~)
途中立ち寄った問題のこちらの箇所。
多分、国交省のサイトにある犬見休憩所だと思うのですが……崩壊でもしたのか、かつての写真にある東屋などが見えず、ただ意味深なスペースがあるのみ。背後の山の稜線や鉄塔の位置関係を見る限り間違い無いとは思うんですけれども。一旦忘れることにして進みます。
青戸の大橋から4kmほど、関電高浜発電所社宅郡を過ぎたあたりで歩道が自然に県道266号線と別れ、山に向かう上り坂となります。
ちなみにここはTABIRINのコースがずれており、実際はもうちょい北を通ります(冒頭ルート図は修正済み)。地理院地図の県道指定もこちらですし、現地に自転車道表示も確認。また、GoogleMapには道自体が載ってません。
新宮神社前を通過して若狭和田ビーチ前へ出ますが、ここはビーチ沿いの道を進みます。
海岸沿いを走る自転車道は複数ありますが、例外なく砂が堆積しておりめちゃめちゃ足を取られます。このときはまだビリー・ボンカーズが届いておらず、ノーマルスリックタイヤだったのでズルズル滑りまくりです。この時にビリー・ボンカーズさえあれば……!
ハイシーズンであれば賑やかなんだろうなという道を、たまに手押ししながら進みます。砂が深いところは本当に進まないので。
城山公園(終点)
潮風受けつつビーチ沿いを走り抜けると終点城山公園へ到着です。終点表記は特になく、地理院地図の県道指定も城山公園に接するところで終了しているため、公園入口を終点と判断して若狭湾自転車道完走。
城山公園には名勝「明鏡洞」があり、その他にも広い芝生、遊歩道、展望台等が設置されております。
展望台まで上がってみたり、しばしぼーっとした後、日暮れも近づいてきたため1km少々先のJR小浜線若狭高浜駅まで自走、撤収。この日の宿は舞鶴方面で取っていたので、電車に揺られつつ移動です。
これにて若狭自転車道終了!翌日は更に西へ向かいます。
若狭自転車道のまとめ
40km超という大規模自転車道としても結構な距離ですが、交通量の多い歩道部分は勿論、専用道部分もかなり路面は維持されており走りにくい部分は殆どありません。ただ、数kmの未整備区間で狭い路肩を走らされます。他方でコース案内はかなり不親切な箇所が多く、予め大枠くらいは認識していないと完走困難。正確さを気にしなければなんとでもなりますが……。
前半は15kmは農地ど真ん中や河川堤防の専用道を走行する場面が多く、お手洗いはちょいちょいあるのですが自販機や補給箇所が殆どありません。海岸沿いに入ってからは「わかさいくる」が合流するため、関連する整備が行われており、小浜市街地近辺とうみんぴあ大飯近辺が2大補給ポイント。夏シーズンだと海水浴場が開くので更に補給ポイントが増えるのですが、オフシーズンは閉鎖されたり閑散としてます。
コース自体は高速で飛ばせるような長距離連続区間が少なく、短めに区切られたバラエティ型。山間から始まり川沿いの堤防や農地のど真ん中、軽い上りの寺社や主要街道沿いや岬っぽいエリアに大橋、最後は砂浜沿いと、次々走るエリアと風景が変わります。見せ場は前半は明通寺や羽賀寺の国宝重文を携える寺社と歴史寄りですが、後半は国定公園である若狭湾を臨む海岸線に青戸の大橋や明鏡洞と自然寄りの見せ場が多数。
バラエティに富んでおり、走りにくい箇所も少ないなかなかのコースとなっております。個人的には寺社への興味が乏しいためスルーしましたが、そちらが趣味の方や御朱印帳目当てであれば更に楽しめるのではと。後半は春や秋であれば横目に若狭の海を眺めながらの走行が爽快です。ただ青戸の大橋は怖いのでちょっとなんとかしてほしいかな。