アワイチ。瀬戸内海に浮かぶパソナ帝国こと淡路島外周150kmを時計回りに一周する、兵庫県激推しサイクリングコースです。市街地を中心に走行する北部、自然が迎える南部とバラエティに富んだコースとなっております。2024年5月2日走破。
アワイチの基本情報
淡路島一周、略して通称アワイチ。
国土交通省指定のナショナルサイクルルートを目指し絶賛邁進中。
一周150km、獲得標高は1kmを超えます。
淡路市にあるCyclism AWAJIやコースからは離れますが南あわじ市サイクルステーション等の拠点があり、その他30箇所近いあわじ花トイレ(平成12年の淡路花博で整備されたもの)等スポット多数。
瀬戸内海に浮かぶ最大の島であり南北両端は明石大橋から兵庫、大鳴門橋から徳島へつながっていますが、鉄道は走っておらず通行は自動車のみで自走は不可。バス輪行は本四海峡バスのみ可能。また、淡路交通バスが「鳴門海峡自転車輸送サービス」を実施しておりこちらは四国側からの実質公式移動ルートです。兵庫側からは明石港から「淡路ジェノバライン」で船で乗り込むのが主流。
大鳴門橋に設けられた余剰スペース(元々は四国新幹線を想定したもの)を自転車道として再利用し、平成27年を目処に徳島から直接自走可能にする計画が進んでおり、2024年7月22日に起工式が行われました。
コースは淡路島外周を計回りに1周。東部はほぼ平坦ですが、南部に大きな坂が4箇所、トータル4.5kmほどの平均斜度は7~9%、最大斜度は10%を超えます。西部は平坦ベースですが緩やかにアップダウンを繰り返します。
隣接する自転車道等はありません。
アワイチに至るまで
時はゴールデンウィーク。愛車のK3に加え、物欲に負けてK9Xをお迎えしてしまった我が陣営。さてどこに行ってみようか、というところでデビュー戦をアワイチに定めました。
北湖ビワイチと大して距離が変わらない上に自宅から1時間以内という立地であるにも関わらず、K3で手を出していなかった理由はただ一つ。南部に聳える4つの激坂越えです。K3はギア比的に多少坂こなせるといってもダンシングするとハンドルポスト逝きますし、10%近い斜度は無理というのは1年前にしまなみ海道の亀老山ヒルクライム(2.7km、平均斜度8.5%)で実証済み。ですが、K9Xの普段全く使い道の無いクッソ軽いローギアならばこなせるはず!
並走するように鉄道が走るビワイチと違って淡路島にはそもそも鉄道がないので途中離脱は困難。なので信頼性も大事ですが、デビューでもこいつならこなしてくれるはず。ということで、既に宿が埋まっている中なんとか確保し、安全策で1泊2日トライです。
まずは朝イチJR明石駅まで輪行、セットアップ。
駅から500mほど、淡路島への渡し船「淡路ジェノバライン」が出ている明石港へ向かいます。一応高速バス等もありますがキャパが限られるので、鉄道が通っていない淡路島に自転車で渡るほぼ唯一の手段となっています。
料金は片道大人600円、自転車は追加で280円が必要。券売機で購入し船着き場へ行くと丁度船が着いたところでした。
土日祝日は基本1時間に1本ですが、GW等繁忙期は臨時ダイヤで平日並みの増便が出ます。GWだけあってヘルメット被ったお仲間がいっぱい。
おおよそ13分の短い船旅で淡路島へと向かいます。たまに無性に船に乗りたくなってさんふらわあやジャンボフェリー乗りに旅に出たりしてましたが、近いところにあるじゃーん、と気づいた日。
ほどなく岩屋港に到着、淡路島へと繰り出します。
アワイチを走る
1日目
岩屋港から100mほどの直ぐ側に、アワイチのスタートとゴールを示すモニュメントが設置されています。背後に国生み神話においてイザナギ・イザナミが生んだとされるオノコロ島説もあるパワースポット絵島を臨むなかなかのフォトスポット。
尚、古代伝承の例に漏れずオノコロ島伝説は日本各地にありますが、淡路島ではこの絵島と南部の沼島や内陸部のおのころ神社が「我こそがオノコロ島」と殴り合っております。
ということでアワイチスタート。淡路島を縦断する国道28号線沿いに路肩または歩道を走ります。が、いきなり路肩が超狭いゾーンがありママチャリ追い抜く時とかロードに追い抜かれるときに気を使います。
3kmほど走ったところで右手に国営明石海峡公園が見えてきます。ちょっと寄り道ですが、大人450円。330ヘクタールの敷地を持つ広大な公園で、多種多様な花が育成・管理されています。
隣接して「淡路夢舞台」があり、こちらは無料。安藤忠雄による建築群で、パソナが一部本社機能を移したとか話題になりました。
油断するとめっちゃ迷いますが、見る分には物珍しくてなかなか楽しいところです。というところで、そろそろ本筋に戻ります。尚、当然ながら自転車持ち込めないので広大な敷地を入口まで徒歩で戻らなきゃなりません。
再び国道28号線沿いを走り始め、waSTEP AWAJISHIMAなる施設を発見。
数件のモールで、地元のSHIMAUMA BURGERなどが入ってます。軽く腹ごしらえでsumheartの「淡路牛カレーパン」をいただきました。
一息ついて走行再開、全然進んでませんが7kmほどで道の駅東浦ターミナルパークの案内を発見。
名物はやま高のたこの姿焼きで、名前の通りたこを丸ごとプレスして焼くという豪快な逸品。サイクリングマップやラックも整備されています。
進行を再開。アワイチコースには基本5kmごとに、起点からの距離を示すキロポストが設置されています。
津名港に向かう海岸沿いは景色は綺麗なのですが、路肩が狭かったり整備状況はどうなんだろうというところ。もうちょっと頑張ってほしいなーとは思うものの、これ広げようと思ったら大変ですね。
津名港近辺の市街地に入る手前で、気になる表示を発見。
入って見ると、廃校を活用してカフェや売店になっている施設でした。
141年の歴史があり、2017年とわりと最近廃校になったようで、2023年にオープンとのこと。全国で子供減ってますから、こういった校舎の再利用は増えそうですね。頑丈ですし。
こちらでは淡路島カレーをいただきました。食ってばっかりだな。
施設内には当時の小学校を再現した展示などもありなかなか面白い。シェアオフィスも設けられているそうで、こういうところでワーケーションなんてのもありなんですかね。個人的には旅先で仕事とか絶対仕事したくないでござる。
一頻り楽しんだのちまたコースに復帰。進むと左手に淡路ワールドパークONOKOROの観覧車が見えてきます。さすがに時間がないので寄りませんが。
さらに進み洲本市に突入。海岸沿いの気分良い道を進みます。途中、左手に目立つ「AWAJI」オブジェと、ピンクの建物が登場。芋専門店としてテレビかなんかで見た記憶があります。この手の文字オブジェも設置されすぎて目新しさがなくなってきた気がしないでもなく。
再度海岸沿いを進み、途中で30kmのキロポストを確認。アワイチ全般ですが、都市部の間の区間はわりと何もないことが多いので、補給等はポイントポイントで行っておく必要があります。斜張橋「洲浜橋」が見えてくれば洲本市市街になります。
再び寄り道のため、洲浜橋を渡って1つ目の信号を右折。旧カネボウ工場の赤レンガ倉庫が立ち並ぶ「S BRICK」の直ぐ側に、目的のモノはあります。
洲本市がゆう帝こと堀井雄二の故郷ということで、ドラクエの記念碑が建っております。ロトの剣と盾というだけで我々は抗いがたい浪漫を感じます。わりと長い事来ようと思ってたのですが機会が無く。写真撮影待ちが大勢いるのであんまり感慨にも耽ってられないのですが。
洲本市街からは国道28号線がルートをそれるため、県道78号線沿いに進みます。走り始めてすぐ右手に洲本城跡が見えるのですが、そちらの方に行くと無料足湯があるので一息入れるのも一興。
洲本城を過ぎてしばらく進むとセブンとファミマが立て続けにあるのですが、ここを過ぎるとおおよそ40kmに渡ってコンビニ等の商店設備が無いため、補給を忘れないように。淡路島の南東部はマジで何も無いので。
寄り道も一通り終了でここからはちょっと気合を入れて進みます。
南東部の県道76号線は「南淡路水仙ライン」と呼ばれております。良きにおいても悪しきにおいてもアワイチ最大の見せ場と言えるでしょう。
起点から40kmほど。いよいよアワイチが佳境を迎えます。道は海岸を離れ山間方面へ。
瀬戸内海国立公園の看板を越えてほどなく、分かれ道正面に立川水仙郷の表示が見えます。右手側の角度が既に怪しい。
というわけでアワイチ峠四天王一番手登場です。気合を入れて登り始めますが、ギアは即9速のローに。登坂の基本に則り急がず慌てず前側に体重をかけて踏み込んでいきますが、ギアの軽さもさることながら、力をかけて登ろうとするとK3に比べて安定性の高さが光る。
途中、アワイチ名物が登場。
もう探偵ナイトスクープ紹介とかめっちゃ書いちゃってますが、いわゆる秘宝館です。しかし、2023年に館長が逝去されたとのことで、残念ながら閉鎖。写真だけ撮って引き続き坂道を往きます。
……と思ったら終わらないんだこれが。下った後にもう一発登りがあり、ガッツリ心を折りに来ます。この坂は本当に性格が悪い。
途中若干休憩入れましたが、手押し無しで登り切りました。K9Xだから我慢できたけどK3だったら我慢できなかった!
坂道が終わると一気に視界が開けます。この南淡路水仙ラインの平地部分がアワイチ最高のスポットの一つ。交通量少なく信号もない広い道路を15kmほど気分良く駆け抜けます。心を無にして風と一体になれる瞬間。
途中ほとんど自販機も店舗もありませんが、モンキーセンター横に「ちゃりこ」という食堂があります。行った時は閉まってましたし、モンキーセンターも閉園間近だったので寄れませんでしたが。
途中で南あわじ市に入り、沼島汽船の手前で1日目の行程終了。予約していた宿へ向かいます。
激坂を登った先、めっちゃ坂の途中にある小さな小学校、灘小学校の廃校跡をリノベーションしたアグリミュージアムNADAが本日の寝床。また廃校か。日本の少子化は深刻だ。
宿取った時点で周囲になにもないのはわかってましたが、対応してくださった方も「この辺船着き場(2km先)にお好み焼き屋が1件あるくらいでなにもないですよ」と言うておりました。食事はパワーバーで済ませる想定で最後のコンビニで仕入れています。
普通は更に先の福良あたりで宿を取るのですが、GW出遅れで選択肢が無かったという。結果的には面白い宿泊先になり、部屋の名前が「図工室」というそのままの名称。そして声がけすればなんと屋上に上がれるらしい。憧れの学校の屋上。
結局、この日は屋上でぼーっとしておりました。そして日は暮れ。
周囲に建物の明かり一つない満天の星空。堪能した後眠りに就くのでした。
2日目
朝日を見た後二度寝をかまして出発です。
最高の景色とコースから開幕で大変気分が宜しい。若干雲ありますがお天気も良好。とはいえ、その気分は長く続かず。
写真でもめちゃめちゃ登ってますが、早々にアワイチ南部の坂越え3箇所がお出迎え。四天王二人目は岩屋から65km、灘土生海岸近くでお出迎え。いきなり足使い切るとか洒落にもなりませんので慌てず騒がずしっかりペダルを踏み込んでいきます。
朝イチで元気ということもあり無事越えて、次は70km地点過ぎ阿万塩屋町で第三の四天王が登場。
多分こいつが一番強いです。登り切る手前で急角度で折り返す坂があり、そこがおそらく最大斜度。13%超とからしく、さすがにその区間100mくらいだけ手押しで歩きました。ちなみにこの看板、下り坂でスピードが乗った先にありまして、本来ならそのまま勢いに任せて坂登り始めたいところを、写真撮るために泣く泣く足を止めました……。
尚、福良で宿を取っていた場合本気のラスボスになります。
第三の坂を越えるとアワイチの中間点、福良に到着。多数の飲食店や道の駅福良が並ぶ観光地で、普通は一泊二日スケジュールだとこの辺で宿を取ります。
この日はスタート間もないこともあり特に寄り道せずスルー。そしてうずしおラインに控える、最後の坂道四天王へ挑みます。
距離こそ長いですが平均勾配は最弱。とはいえ前の坂でヘロヘロなので実際の斜度よりキツく感じます。
四天王を撃破すると、その先には道の駅うずしおがある、はずなのですが現在工事中で、臨時施設のうずまちテラスで仮営業中。
到着は午前10時前でしたが、既に人だかり。ひときわ長い列に自分も並び、待つこと30分。
出てきたのがこちらです。
淡路島名物の玉ねぎをメインにしたご当地バーガーでございます。これを食いに来たと言っても過言ではない。玉ねぎの甘味が坂道で付かれた体に染みます。
1時間ほど休憩して、再出発。来た道を折り返し進む……のですが、ここで突然のチェーンの脱落に見舞われます。うっかり軽い坂道でトルクかかった状態でギアの変速したせいっぽい。K9Xの変速はたまに飛んでる感があってちょっと不安になることが。まあさらっとリカバリして再スタート。
まあ激坂四天王も撃破しましたし、もう障害はありません。
南西部を進みますが、たまに「緑のみちしるべ」というスポットがあります。どうも駐車場を備えた休憩所兼観光ポイントのようで、西側で数か所見かけました。
市街地を走ってると迂回看板。これは大回り可?と思ったら、どうも進めそうな気配。折り返しになったら嫌だなあと思いつつ進行。
結果、通行規制はかかってましたが通れました。急な崖はこれがあるから怖いですなー。
県道25号線から県道31号線に乗り換え、南あわじの市街地を抜けたところで国指定名勝慶野松原横を通り抜けます。一面の松はその数約5万本。海岸側に出れば2.5kmに渡る砂浜が広がっています。
進む県道31号線は「淡路サンセットライン」と銘打たれ、夕日が美しいことに定評があります。夕方にドライブで走るといい景色なのでしょうけれど、この日は時間的に拝めそうになく。
基本路肩を走るのですが、たまに歩道が現れて誘導されます。が、すぐ終わるのであんまり意味がない。
西側は有名な飲食店などが多くあります。パソナの誘致でできたスポットも多し。
ここで寄り道です。
寄り道先は北淡震災記念公園 野島断層保存館。135kmを過ぎたあたりでコースから少しだけ島内側に入ったところにあります。阪神・淡路大震災の記録保存施設となっております。
当時、このJRシュプール号が脱線したすぐ側に住んでまして、地震が起きた瞬間の記憶は布団被りながら聞いたこの脱線に伴う甲高い金属音と共に鮮明に脳裏に焼き付いております。
先日発生した能登地震でも海底が数メートル持ち上がって陸になるというとんでもない地殻変動が起こっていましたが、この地震の威力の凄まじさ。一度足を運ぶことをお勧めしたい。
ということでコースに戻ります。
西側の商業施設は休日ともなると大体人でごった返しています。パソナ主導の資本投下に加え、数年間の病禍でご近所レクリエーションが主流になった結果、休日や連休となると兵庫や徳島から淡路島にやってくる人が相当に増えた印象です。
関東で言うと江の島なんかもそうですが、出入り口が橋しかないので車で渋滞すると地獄。
明石大橋が見えればいよいよゴールが実感できる位置。サンセットラインは地味ーにゆるやかな登りがあって、思ったほど速度が出なかったり体力持ってかれたりします。一泊二日だと全然元気ですが、1日で回ろうとすると地味に効きそうな感じ。
最後のポイントで道の駅あわじでお土産買ったり美湯松帆の郷で汗を流していくのも一興。
ということで一泊二日K9Xによるアワイチ終了です。坂道は手強かったですがその他は全く問題ナシ!
再びジェノバラインに乗り、淡路島を後にします。
行き同様、明石駅から輪行。
これにてK9Xデビュー戦、アワイチ終了!
アワイチのまとめ
というわけでK9Xデビュー戦のアワイチでした。1日の走行距離が最大で90km、K3だと若干心許ないところですが、走行感も剛性も段違いレベルで安心感があります。登坂性能は段違いですね、同じ坂をK3で登れと言われてもかなり嫌です。間違いなく大半手押しになる。
アワイチのコースは大きく序盤の東部海岸沿いエリア、激坂4本を含む南部自然エリア、西側海岸沿いエリアに分けられると思います。序盤はわりと市街地感の記憶が強いですが、見どころも多くいい感じ。南部は激坂をいい緩急と取るか、初心者に厳しい関門と取るかでだいぶ評価が変わりますが、坂に弱いおりたたぶとしては基本滅ぶべし側。しかし南淡路水仙ラインは全区間指折りの快走ゾーンです。西側は終盤ということもありちょっとダレ気味になりがち。飲食店が非常に多いのですが、観光客が多く入りにくい店も多いという。
コース案内はガッツリ整備されており路面や看板の案内をしっかり見ていればまず迷いません。道は車道沿いが多く一部路肩が狭くて危険を感じますが、下が崖だったりして拡張も難しいのは悩みどころ。追い抜かれる時自動車が大きく膨らんで避けていくのは精神的によろしくない。
ちなみにビワイチとの比較では激坂4本分で圧倒的にアワイチの方がキツイです。個人的には自宅から1時間かからず行けるご近所コースなのですが、K3で走り比べするかとなると悩むところ……。
初めての場合は坂でバテるとなかなか厳しいので、最悪タクシー配車アプリやCYCLISM AWAJIの出張サポート等も頭の片隅に置きつつ、準備万端で臨むのがよろしいかと思われます。